「売上ー経費=利益」ではない

売上-経費=利益

会社の決算書を最も簡単に表現するとこうなります。

売上から経費を引いて残った分が利益という計算式です。

世界中の全ての決算書が、この式に従って作られており、皆が利益とはこのように計算するものだと信じています。

ですが私は、この式は会計基準上正しいだけで、企業の本質的な経済実態を表してはいないと考えています。

 

順序が逆

では何が正しい(=より経済実態に近い)かと言うと、

-経費+売上=利益 です。

「逆にしただけじゃないか(怒)」という方もいるかもしれませんが、その通りです。

順序が逆。因果関係が逆になっています。

経費は常に先に出ていきます。経費を先に使い、その成果として後から売上が上がるのです。

今日の売上は過去の何らかの活動結果(=経費の発生)として上がるものであり、先に売上が上がって後から経費が発生するのではありません。

 

小売店で考えてみる

例えば小売店のある日の売上が30万円で、販売した商品の仕入原価の合計が20万円だとします。

会計ルール上は「売上30万円-仕入原価20万円=利益10万円」と表示しますが、これは経済実態を正しく表しているとはいえません。

「-20万円の商品仕入という原因が先にあり、30万円の売上という結果が後から上がったため10万円の利益が出た」が正しい経済実態であり、「30万円の売上が先にあり、後から20万円の仕入原価が発生して10万円の利益が残った」のではありません。

 

先行して投下した経費(=仕入原価)を、売上が上回った場合は利益となり、下回った場合は損失になるということです。

「経費を使って売上を買う」というイメージです。

 

結構重要な考え方だと思う

屁理屈をこねているようですが、企業経営において「売上-経費=利益」という考え方では判断を誤るかもしれません。

「売上-経費=利益」という計算式を見て、利益を増やしたいと思う経営者はどう考えるでしょうか。

「売上を増やすのは難しいが、経費を減らすことによって利益を増やすこともできる」と考える人も多いのではないでしょうか。

確かに人員削減などによって短期的な利益を増やすことはできるでしょう。

ですがそれは局面的な調整であり、大局的にみた場合、経費を減らすと売上も減ります

経費とは未来の売上を生み出すための原動力だからです。

経費というインプットを先に増やさないと売上というアウトプットは増えないのです。

 

経営は先行投資

「売上-経費=利益」という式は、因果関係が実態と逆になっていますので、「売上は所与であり、経費を削減すればその分利益が増える」と錯覚するリスクがあります。

一方、「-経費+売上=利益」という式の場合はどうでしょうか。

先に経費を使い、その結果として売上が上がるという考え方です。

「経費をいかにうまく使って、多くの成果(=売上)を上げようか」と考えるのではないでしょうか。少なくとも売上が所与であるとは考えないはずです。

お気付きと思いますが、ここで経費とは投資(=売上を上げるためのインプット)のことを意味しています

会計処理上は、現金支出のあった期の経費(=会計上の経費)と将来の経費(=会計上の資産)とを区別しますが、これはあくまでも1年間の期間損益計算を行うための作業です。

期間損益計算を無視して経済的実質を考えた場合、営利企業である企業の支出は全額が将来の売上のための投資です。ボールペン1本も投資です。経費(=消費)は存在しません。

 

経営は投資です。有効な投資を行い、いかにして大きな買い物(=売上)をするのかを考えることが重要です。

経営者の頭の中は、-経費(=投資)+売上=利益であるべきだと思います。