社会保険料の「労使折半」は数字のマジック

厚生年金と健康保険の料率は年々上がり続け、ほぼ年収の30%に達しました。

そしてこれを会社と本人が半分ずつ負担(労使折半)することになっています。

年収500万円であれば本人の給料から75万円天引きされ、それとは別に会社が75万円支払うことになります。

ですが、これは実態を正しく表しているのでしょうか?

会社が払ってくれている?

「会社が半分払ってくれてありがたい」と考えている人が多いですが、これは完全なる見せ方のトリックです。

会社が負担した75万円の原資はどこかと考えるとすぐにわかります。 

当然、顧客からの売上・利益です。「どこかにある蔵」を開いて払っている訳ではありません。

そしてその売上・利益を稼ぎ出したのは、その企業で働いている役員や従業員です。 

結局のところ社会保険料の会社負担分は、自分達が生み出した付加価値の中から支払われているのですから、実質的には従業員自身が負担していることになります。

実態はこう

つまり「額面年収575万円、社会保険料が150万円引かれて手取り425万円」が実態です。(所得税・住民税は別途控除)

ですが給与明細にありのままの数字を書いてしまうとショックが大き過ぎるので、「額面年収500万円の場合、本人負担は75万円だけで、会社が別途75万円払ってくれている」という説明がされているだけです。

誰が考えたのか知りませんが、素晴らしい数字のマジックです。

「わかりやすい数字」が連呼される

この手のトリックは世の中にあふれています。

厚生年金の支給額が現役時代の何割かという所得代替率も同様です。

「所得代替率5割は維持する」という使われ方をしますので、現役時代の半分はあるというイメージを持ちます。

ですが計算式をみてみると、分母は65歳になった時点の現役世代の平均年収から税金や社会保険料を控除した後の金額(手取り)であり、分子は税金・保険料を控除される前の年金支給額(額面)となっています。

どう考えても手取り同士(または額面同士)で比率を出すべきであり、明らかな数字のトリックです。

陽性者数も同様

現在の新型コロナの1日あたり新規陽性者数も同じです。

「今日、新たに何人出た」という分子ばかり報道されますが、分母である検査数はほぼ公表されていません。

半年前より検査数が20倍になっているのに陽性者数が3倍程度であれば、陽性率は減っていると報道すべきです。

数字を発表する側にもいろいろな思惑があるのだと思いますが、マスコミが連呼する「わかりやすい数字」を鵜呑みにせず、気になった点については自分で調べる姿勢が重要だと思います。